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村に伝わる民話:小見の観音

公開日 2013年3月21日

更新日 2024年2月7日

小見の観音

 千曲川が小見地籍を洗っていた頃のことである。いつもながらのはげしい洪水に里人らは手のつけようもなく、ただ茫然とたちつくし一刻も早く減水を祈るのみ。

 そうしたみぎりに一体の仏像、川辺に打ちよせられて漂っている。

 里人ら一同は、時の里正太右ヱ門方にその仏像を講じて堂宇建立をはかる。たまたま里人の中に、たんという邪念妄想の老婆があって、里人のはからいの議を斥けて「かかる木片にひとしきもの、何の霊験にやあらん」と里人の押しとどめるもきかず、直ちに尊体の胸に釘を打ちさす。みるみる、血流れ出したり。

 一同おどろき、畏れかしこみて、堂宇建立の議をまとめ、そこに安置した。悪婆たんは、おそれおののきて前非を悔い、発心して髪を落し尼となって朝夕奉仕したという。

 その後は千曲川の洪水は、いつもながらの勢いなるも、川欠けはなくなった。里人らはその霊験のあらたかなるに信仰する者多くなり、近郷近在から病に悩むものなど髪をささげて、その全快を祈祷するあとをたたないという。

 けだしこの仏像こそ観世音菩薩で、観音寺の起因である。

(穂高村誌 小見部落による)

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